プレゼンティーズムとは?企業が知っておきたい「見えない生産性低下」

「出勤している従業員が多いから、健康面では大きな問題はなさそう」

そう考えていても、実際には体調不良を抱えながら働き、普段どおりのパフォーマンスを発揮できていない従業員がいるかもしれません。

このような、健康上の問題を抱えながら出勤し、仕事のパフォーマンスが低下している状態を「プレゼンティーズム」といいます。

欠勤や休職とは異なり、勤怠データだけでは把握しにくいのが特徴です。そのため企業では、欠勤者数だけを見るのではなく、従業員が「出勤しているときに、どの程度仕事へ支障が出ているか」を確認することが重要です。

ただし、プレゼンティーズムの原因を「従業員の健康管理不足」だけに求めるのは適切ではありません。身体的不調やメンタルヘルス、睡眠などの健康問題だけでなく、業務量や職場環境なども含めて確認し、課題に合った対策を選ぶ必要があります。

プレゼンティーズム(presenteeism)は、健康問題によって仕事のパフォーマンスが低下している状態を表す概念です。

経済産業省の「健康経営オフィスレポート」では、欠勤には至っておらず勤怠管理上は表に出てこないものの、健康問題を理由に生産性が低下している状態として説明されています。

例えば、

  • 腰が痛く、長時間座っていると集中しにくい
  • 肩や首の不調が気になり、作業効率が落ちる
  • 睡眠不足で頭が働きにくい
  • 頭痛があり、普段より仕事に時間がかかる
  • 心身の不調によって判断や集中が難しい

といった状態です。

ここで重要なのは、「体調が悪いこと」そのものではなく、その健康問題によって仕事のパフォーマンスに支障が生じていることです。

アブセンティーズムとの違い

プレゼンティーズムと合わせて知っておきたいのが「アブセンティーズム」です。

指標状態企業からの把握しやすさ
アブセンティーズム健康上の問題によって欠勤・休業している勤怠などから比較的把握しやすい
プレゼンティーズム出勤しているが、健康問題によって仕事のパフォーマンスが低下している勤怠だけでは把握しにくい

欠勤であれば「何日休んだか」を勤怠データから確認できます。

一方、プレゼンティーズムでは従業員は出勤しています。そのため、出勤率や欠勤日数だけでは問題が見えにくくなります。

プレゼンティーズムが「見えない生産性低下」と呼ばれる理由は、勤怠上は通常勤務に見えるからです。
例えば、ある従業員が腰痛を抱えながら一日勤務していたとします。

出勤簿だけを見れば「出勤」です。しかし実際には、痛みのため何度も作業を中断していたり、集中しにくかったり、普段より業務に時間がかかっていたりする可能性があります。

企業側が、「欠勤は増えていない」「休職者も少ない」「健康診断の受診率も高い」

という指標だけを確認している場合、このような仕事上の支障を十分に把握できないことがあります。
経済産業省の健康経営に関する資料でも、アブセンティーズムとプレゼンティーズムは生産性への影響を評価する指標として扱われています。

したがって企業が健康課題を確認するときは、「休んでいるか」だけではなく、「出勤しているときに健康上の問題で仕事へ支障が出ていないか」まで見ることが重要です。

プレゼンティーズムは、特定の一つの症状だけによって生じるものではありません。

日本の労働者1万人を対象とした2020年の研究では、仕事への支障が大きい健康問題として、首の痛み・肩こり、腰痛、メンタルヘルスに関する問題などが報告されています。

また、日本の労働者を対象とした別の研究では、抑うつ症状、食欲不振、睡眠不足など、複数の健康問題とプレゼンティーズムとの関連が報告されています。

つまり企業では、

  • 肩・首・腰などの身体的不調
  • メンタルヘルスに関する問題
  • 睡眠に関する問題
  • 頭痛などの不調
  • その他の体調不良

などを幅広く考える必要があります。
ただし、「肩こりがあるから生産性が低い」「腰痛を改善すれば生産性が上がる」と単純に判断することはできません。
重要なのは、どの健康問題があるかだけではなく、それによって実際に仕事へどの程度支障が出ているかを確認することです。

プレゼンティーズムは勤怠データだけでは把握しにくいため、従業員へのアンケートなどによって測定する方法があります。

経済産業省の資料では、主な測定方法として、

  • WHO-HPQ
  • SPQ(東大1項目版)
  • WLQ
  • WFun
  • QQmethod

などが挙げられています。

2024年度健康経営度調査の回答企業では、プレゼンティーズムの測定方法としてSPQを使用した企業が53%、WHO-HPQが15%、WFunが6%、WLQが4%などとなっていました。

どの指標を使うかによって質問内容や数値の意味が異なるため、異なる尺度で得られた数値をそのまま横並びで比較しないことが重要です。

測定したら「全社平均」だけで終わらせない

例えば全社平均が前年より悪化していたとしても、その数値だけでは原因は分かりません。
次に確認したいのは、

  • どの部署・職種で高いか
  • 年代や働き方による偏りがあるか
  • どの健康問題を抱えている人で高いか
  • どの業務で支障を感じているか
  • 時期による変化があるか

といった分布です。

ただし、細かく分類しすぎると個人を推測できる可能性があります。従業員数が少ない部署などでは、健康情報やアンケート結果の取り扱いに十分配慮する必要があります。

目的は個人を特定することではなく、組織としてどこに課題が集中しているのかを把握することです。

プレゼンティーズムを測定した後に最も注意したいのが、数値から原因を即断することです。
例えば、「営業部門のプレゼンティーズムが高い」
という結果が出たとします。これは確認できた「事実」です。しかし、

「営業部門は腰痛が多いからだ」
「上司との関係が悪いからだ」
「福利厚生が足りないからだ」

というところまでは、その数値だけでは分かりません。
ここからは原因仮説を立て、追加情報を確認します。

確認された状態次に確認したいこと対策を考える方向
肩・首・腰の不調が多い作業姿勢、設備、同一姿勢の時間、身体への負担作業環境、業務設計、身体的健康支援
睡眠に関する問題が多い長時間労働、勤務時間、生活習慣、交代勤務など働き方、労務管理、健康支援
メンタル面の不調が多い業務量、人間関係、役割、心理的負担など業務・組織面、産業保健等の専門的支援
複数部署で広く悪化全社的な業務量や制度変更など共通要因の有無組織全体の課題を追加確認
特定部署だけ悪化部署固有の業務・環境・マネジメント部署単位で追加確認

このように、

測定 → 課題の分布を確認 → 原因仮説を立てる → 追加確認 → 対策を決める

という順番で考えると、施策を選びやすくなります。
プレゼンティーズムの数値は「原因を教えてくれる指標」ではなく、追加でどこを調べるべきかを考えるための入口として使うことが重要です。

プレゼンティーズムが確認されたからといって、健康セミナーや福利厚生を追加すればよいとは限りません。
例えば長時間労働や過大な業務量が主な問題であれば、まず検討すべきなのは業務量や人員配置、働き方などです。

作業環境に問題があるのであれば、設備や作業方法の改善が優先される場合があります。

身体的不調が仕事への支障として多く確認されているのであれば、作業環境の確認に加え、従業員が身体の状態について相談したり、健康づくりに取り組んだりできる環境を整えることも選択肢になります。

メンタルヘルスに関する課題が中心であれば、産業医や産業保健スタッフなど適切な専門職との連携が必要になる場合があります。

つまり、対策は「人気の福利厚生」から選ぶのではなく、自社で確認された課題 → 原因候補 → 優先すべき対策の順に考えることが重要です。

身体的不調が多い場合にRelabが支援できること

肩・首・腰の不調や疲労など、身体的な課題が仕事上の困りごととして確認された場合には、企業内で身体のコンディションを支援する方法も選択肢の一つです。

Relabでは企業へ訪問し、従業員へのコンディショニングケアを実施しています。

また、実施後のアンケートや利用データをもとに、どのような身体の悩みや従業員の声があるのかを分析し、企業へフィードバックしています。

ただし、プレゼンティーズムの主な背景が業務量、労働時間、人員配置、マネジメント、人間関係などにある場合、それらを身体ケアへ置き換えることはできません。

まず自社の課題を確認し、身体的な健康課題への支援が必要と判断された場合の選択肢として検討することが大切です。

Relabのコンディショニングサービスについて詳しく見る

健康施策は、導入しただけでは効果を判断できません。

例えば健康セミナーを実施した場合、「参加者が100人だった」という数字は実施状況を表していますが、それだけでは従業員の健康課題や仕事上の支障が変化したかは分かりません。

施策後には、

  • プレゼンティーズム指標がどう変化したか
  • 対象となった健康課題がどう変化したか
  • 仕事上の支障がどう変化したか
  • 部署や職種による差がどう変化したか
  • 利用率や参加率に偏りがないか

などを確認します。ここでも、単純な前後比較だけで「この施策によって改善した」と断定するのは避ける必要があります。繁忙期の終了、業務内容の変更、人員増加、組織変更など、同じ時期に別の要因が変化している可能性があるためです。

まずは同じ方法で継続的に測定し、変化を確認する。そのうえで、施策以外に変わった条件も確認しながら評価することが重要です。

プレゼンティーズムとは、健康上の問題を抱えながら出勤し、仕事のパフォーマンスが低下している状態です。
欠勤や休職とは異なり、勤怠だけでは把握しにくいため、企業にとって「見えない生産性低下」になりやすい点が特徴です。

自社で取り組む場合は、最初から施策を決めるのではなく、プレゼンティーズムを測定し、どの従業員層・部署・健康課題で仕事への支障が生じているのかを確認することから始めます。

そのうえで、業務量、職場環境、身体的不調、メンタルヘルス、睡眠など必要な情報を追加で確認し、自社で優先すべき対策を判断します。

「何人休んでいるか」だけでなく、「出勤している従業員が、健康上の問題によってどの程度働きにくさを感じているか」まで見ることが、健康課題を把握する第一歩になります。

Relabについて

Relabは、企業へ訪問してコンディショニングケアを提供し、実施後のアンケートや利用データをもとに従業員の身体の悩みや声を分析して企業へフィードバックする、企業向け健康支援サービスです。

肩・首・腰などの身体的不調が従業員の仕事上の困りごととして確認され、「社内で身体の健康支援を行いたい」「従業員が利用しやすい仕組みを作りたい」という場合は、選択肢の一つとしてご相談いただけます。

Relabについて詳しく見る

参考資料・参考文献

  1. 経済産業省「健康経営オフィスレポート」
    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
  2. 経済産業省「健康経営における生産性評価等に関する資料(2024年度健康経営度調査等)」
    https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/002_s01_03.pdf
  3. 厚生労働省「腰痛予防対策」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31158.html
  4. Yoshimoto T, Oka H, Fujii T, Nagata T, Matsudaira K. The Economic Burden of Lost Productivity due to Presenteeism Caused by Health Conditions Among Workers in Japan. Journal of Occupational and Environmental Medicine. 2020;62(10):883-888.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32826548/
  5. Goto E, Ishikawa H, Okuhara T, et al. Associations between job and workplace factors, health and physical factors, personal factors, and presenteeism among general employees in Japan: A longitudinal study. Journal of Occupational Health. 2022;64(1).
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35797138/