従業員の健康課題を企業はどう把握する?健康状態を可視化する方法

「従業員の健康状態を把握したいが、何を見ればよいのか分からない」
「健康診断は実施しているものの、自社にどのような健康課題があるのか見えてこない」

このような企業では、健康診断の結果だけで判断するのではなく、健康診断、ストレスチェック、勤怠データ、従業員アンケートなど、異なる情報を組み合わせて確認することが重要です。

なぜなら、健康診断で把握しやすい身体的な健康状態と、仕事中の不調、ストレス、欠勤、仕事への支障などは、それぞれ異なる側面を示しているからです。

さらに、全社平均だけではなく、部署・職種などの単位で課題の分布を確認すると「どこに、どのような課題があるのか」を整理しやすくなります。
データから分かるのはあくまで「現状」です。特定の部署で不調が多いからといって、その原因を業務量や職場環境だとすぐに断定することはできません。

この記事では、企業が従業員の健康課題を把握するために、何を見るか、どう組み合わせるか、結果をどう解釈し、次の施策につなげるかまで順番に解説します。

企業が従業員の健康課題を把握するときに、まず確認したいのが「何のデータを見て判断しているか」です。
例えば、健康診断では血圧、血糖、血中脂質など、従業員の身体的な健康状態を確認できます。

労働安全衛生規則では、事業者は常時使用する労働者に対し、原則として1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施することが定められています。しかし、健康診断だけでは、

  • 肩や腰などの身体的不調で仕事に支障が出ている
  • 強いストレスを感じている
  • 体調不良による欠勤が増えている
  • 出勤はしているが体調の問題で十分に仕事ができない
  • 特定の部署や職種に不調が集中している

といった状況まで十分に把握できるとは限りません。
反対に、従業員アンケートだけを見ても、血圧や血糖などの医学的な検査結果は分かりません。
つまり、「健康状態」という一つの数字があるのではなく、複数の情報から異なる側面を確認する必要があります。

企業が健康課題を可視化する目的は、従業員を一律に「健康・不健康」に分類することではありません。
どのような課題が、どこに、どの程度存在している可能性があるのかを整理し、次に何を確認するべきか判断できる状態をつくることが大切です。

企業が健康課題を把握するときは、主に次の5つの情報を分けて考えると整理しやすくなります。

確認する情報主に分かること注意点
健康診断血圧・血糖・血中脂質などの健康状態仕事中の支障や職場環境までは分からない
ストレスチェック心理的負担や職場のストレス要因など個人情報・集団分析の扱いに注意が必要
勤怠データ欠勤・休職・遅刻・早退など欠勤理由を健康問題と決めつけない
従業員アンケート身体的不調、仕事への支障、困りごとなど質問内容や回答率によって結果が変わる
業務・職場情報部署、職種、勤務形態、業務特性など健康データとの関連だけで原因を断定しない

健康診断

健康診断は、従業員の健康状態を把握する基本的な情報です。
血圧、血糖、血中脂質、肝機能などの結果を確認することで、企業全体としてどのような健康上の傾向があるのかを検討できます。

ただし、健康診断の有所見率だけを見て「自社の健康課題はこれだ」と決めるのは早計です。
例えば、肩こりや腰痛、疲労などによって仕事に支障を感じていても、健康診断の数値には表れない場合があります。

ストレスチェック

ストレスチェックでは、従業員の心理的な負担などを確認できます。
厚生労働省のストレスチェック実施プログラムでは、個人結果だけでなく集団分析も行えるため、職場単位で傾向を確認する方法があります。

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場でも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されます。

勤怠データ

欠勤、休職、遅刻、早退などの勤怠データからは、働けなかった状況を確認できます。

例えば、「特定部署で欠勤日数が増えている」という事実が確認できれば、その部署について追加確認するきっかけになります。でも「欠勤が増えた=健康状態が悪化した」とは限りません。

有給休暇の取得状況や家庭事情など、健康以外の理由も考えられるため、勤怠データだけで原因を判断しないことが重要です。

従業員アンケート

健康診断や勤怠データだけでは見えにくい情報を補うのが、従業員アンケートです。例えば、

  • 肩・腰・首などの身体的不調
  • 疲労感
  • 睡眠
  • 不調による仕事への支障
  • 職場で困っていること
  • 必要としている健康支援

などを確認できます。
特に「症状があるか」だけではなく、その症状によって仕事や日常生活にどの程度支障があるかまで確認すると、企業として対応を検討すべき課題を判断しやすくなります。

業務・職場情報

健康情報だけを集計しても、「どこに課題があるのか」が見えない場合があります。
そこで、必要に応じて部署、職種、勤務形態、仕事内容などと組み合わせて確認します。
例えば、全社では腰の不調が20%だったとしても、

  • 事務職では10%
  • 現場職では35%

という違いがあれば、全社一律の施策を考える前に、現場職の仕事内容や作業環境を確認する必要があるかもしれません。重要なのは、属性別の差を原因ではなく「追加確認が必要な場所を見つける情報」として使うことです。

健康課題の把握では、データをたくさん集めること自体が目的ではありません。
重要なのは、異なるデータが何を示しているのかを分けたうえで組み合わせることです。
例えば、次のような状態を考えてみます。

確認結果そこから分かること
腰の不調を訴える人が多い身体的不調の存在
仕事への支障を感じる人も多い業務への影響が生じている可能性
特定部署に集中している課題に偏りがある可能性
その部署で長時間労働も多い原因を検討するための追加情報
作業姿勢・業務量にも問題がある対策候補を検討する材料

このとき、「腰痛が多いからコンディショニングを導入する」とすぐに決めるのではありません。まず、
不調がある → 仕事への支障がある → どこに多いかを見る → 関連しそうな業務・職場要因を確認するという順番で整理します。
例をあげると、腰の不調が多くても、重量物の取り扱いや作業環境に大きな問題が確認されれば、身体へのケアより先に作業環境や業務方法を見直す必要があります。
一方、職場環境を確認しても明確な問題が見つからず、身体的不調を抱える従業員が一定数いる場合には、身体的な健康支援も選択肢になります。

このように、可視化は施策を決めることではなく、「何を優先して確認するか」を明確にするために行います。

従業員の健康課題を把握するときに注意したいのが、全社平均だけで判断しないことです。例えば、「腰の不調がある従業員は全社で20%」という数字だけでは、その20%がどこにいるのか分かりません。実際には、

  • 特定の部署に集中している
  • 特定の職種に多い
  • 交代勤務者に多い
  • 幅広い部署に分散している

など、分布によって次に確認すべきことが変わります。

部署・職種などに分けて確認する

個人が特定されないことを前提に、必要に応じて、

  • 部署
  • 職種
  • 勤務形態
  • 年代
  • 拠点

などに分けて確認します。例えば、肩・腰の不調が特定の職種に集中していれば、その職種の作業姿勢や仕事内容、休憩、作業環境などを追加で確認する候補になります。
一方、複数部署で同じような傾向が見られる場合は、全社共通の課題として検討する余地があります。

「人数」だけでなく「割合」も確認する

部署ごとの比較では、人数だけを見ると規模の大きい部署ほど問題が大きく見えます。

そのため、「不調を訴えた人数」だけではなく、「その部署の従業員のうち何%が該当しているか」も確認します。
さらに、回答率にも注意が必要です。

例えば20人の部署で5人が腰の不調を回答していても、アンケート回答者が6人しかいなければ、部署全体の25%と単純に解釈することはできません。
人数、割合、母数、回答率をセットで見ることが重要です。

健康課題を可視化した後に最も注意したいのが、「見つかった傾向」と「原因」を混同しないことです。

例えば、「営業部でストレスが高い」という結果が出たとします。これは確認された事実になり得ます。しかし、そこからすぐに「営業ノルマが原因だ」「上司のマネジメントが原因だ」と判断することはできません。

必要なのは、事実 → 原因仮説 → 追加確認 → 判断という順番です。
例えば、

事実
営業部でストレス指標が他部署より高い
↓
原因仮説
業務量、勤務時間、顧客対応、人間関係などが関係している可能性がある
↓
追加確認
勤怠データ、業務量、アンケート、ヒアリングなどを確認する
↓
判断
確認された要因に応じて施策を選択する

という流れです。身体的不調でも同じです。「腰痛が多い」という結果だけでは、

  • 長時間の座位
  • 重量物の取り扱い
  • 作業環境
  • 業務量
  • 個人の健康状態

など、どの要因が関係しているかは判断できません。
可視化したデータは、原因を証明するものではなく、次に何を調べるべきかを絞り込むための情報として扱うことが重要です。

健康課題が複数見つかった場合、すべてに同時に対応する必要はありません。まずは、企業として優先して対応すべき課題を整理します。その際、例えば次の観点から検討できます。

該当する従業員がどの程度いるか

一部の従業員だけに見られる課題なのか、全社的に広がっている課題なのかを確認します。

仕事への支障がどの程度あるか

症状や不調があっても、仕事への影響がほとんどない場合と、業務遂行に大きく影響している場合では優先度が異なります。

特定の部署・職種へ集中しているか

課題が特定部署に集中している場合は、全社向けの健康施策より、その部署の業務や職場環境を確認する方が先になることがあります。

企業側で改善できる要因があるか

勤務時間、業務量、作業環境、人員配置などに課題が確認された場合は、それらへの対応を優先します。
健康支援や福利厚生だけで職場側の問題を代替しないことが重要です。

実施後に評価できるか

施策を実施する前に、「何が変われば改善と判断するのか」も決めておきます。例えば、

  • 対象となる不調の割合
  • 仕事への支障
  • 施策の利用率
  • 従業員の評価
  • 欠勤等の推移

などです。経済産業省の健康経営に関する検討でも、企業が自社の状況を把握したうえで、施策の実施だけではなく結果・成果を確認する考え方が重視されています。

つまり、把握 → 課題設定 → 施策 → 再測定までを一つの流れとして考えることが重要です。

従業員の健康状態を把握する際は、データを細かく分析すればよいわけではありません。
健康診断結果などの健康情報は慎重な取り扱いが必要です。

厚生労働省の手引きでは、健康情報について、労働者の健康確保に活用する必要がある一方、不適切に扱われれば人事等で不利益な取り扱いにつながるおそれがあるため、適正な取り扱いが必要とされています。
企業で健康状態を可視化するときは、

  • 何の目的で情報を収集するのか
  • 誰が情報を扱うのか
  • どの範囲まで共有するのか
  • どのように保管するのか
  • 集計結果から個人が特定されないか

などをあらかじめ整理しておく必要があります。特に小規模な部署では注意が必要です。

2026年6月の労働安全衛生規則改正により、2027年4月1日から、ストレスチェックの集団ごとの分析を行う場合は「特定の個人を識別することができない方法」で実施することが明文化されます。
小規模な集団では、集計結果から特定の従業員が推測されないよう配慮し、部署・職種などの分布を確認する場合も分析単位を細かくしすぎないことが重要です。

例えば「40代・女性・特定部署」など細かく分類すると、氏名を表示していなくても該当者が推測できる場合があります。健康課題を把握する目的であれば、経営層や人事担当者が個人の症状を知る必要があるとは限りません。

企業全体の課題把握に必要な情報と、個人の健康管理に必要な情報を分けて考えることが重要です。

従業員の健康課題は、健康診断だけ、ストレスチェックだけ、アンケートだけでは全体像を把握しにくい場合があります。まずは自社にすでにある、健康診断・ストレスチェック・勤怠データ・従業員アンケートなどを整理し、それぞれ「何が分かるデータなのか」を確認するところから始めてみてください。

そのうえで、全社平均だけではなく部署・職種などの分布を確認し、気になる傾向が見つかったところについて業務や職場環境を追加で確認します。

重要なのは、データから原因を決めつけるのではなく、現状把握→追加確認→施策選択→再評価の順に進めることです。

Relabについて

企業の健康課題を整理した結果、肩・腰などの身体的不調や、身体のコンディションに関する課題が確認された場合は、身体的な健康支援も選択肢の一つになります。

Relabでは、企業へ訪問してコンディショニングを行うだけでなく、利用状況や身体の傾向、従業員の声などを集計・分析し、企業向けのレポートとして可視化しています。

ただし、業務量、長時間労働、人員配置、マネジメント、作業環境などが主な課題として確認された場合、それらへの対応を身体ケアより優先して検討する必要があります。

「身体の不調を訴える従業員が多い」「身体的な健康課題をもう少し具体的に把握したい」といった場合は、自社の課題に合った支援かどうか、Relabのサービス内容や分析レポートをご確認ください。

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参考資料・参考文献