従業員の定着率を高めるには?企業が見直したい職場づくりと福利厚生

「採用しても人が定着しない」
「退職者が続いているが、何から見直せばよいのか分からない」
と悩む企業は少なくありません。

従業員の定着率を高めるうえで重要なのは、福利厚生を増やすことだけではありません。
まず、自社で「誰が・どこで・いつ離職しているのか」を把握し、その背景にある課題を切り分ける必要があります。

厚生労働省も、人材の確保には「魅力ある職場づくり」が重要であり、その対象として「評価・処遇・配置」「人材育成」「業務管理・組織管理・人間関係管理」「福利厚生・安全管理・精神衛生」などを挙げています。

つまり、定着率向上は一つの施策で解決する課題ではありません。

離職状況を把握する → 原因の仮説を立てる → 追加確認する → 優先課題を決める → 適した施策を実施する → 結果を検証する

という順序で考えることが大切です。

この記事では、従業員の定着率を高めるために、企業が何を確認し、職場環境や福利厚生をどのように見直せばよいのかを解説します。

定着率を高めたい企業が最初に行うべきことは、福利厚生の追加ではなく、自社で起きている離職の構造を把握することです。

離職の背景は企業や従業員によって異なります。

たとえば、

  • 賃金や評価への不満
  • 長時間労働や休日の取りにくさ
  • 業務量の偏り
  • 上司や同僚との人間関係
  • 仕事内容とのミスマッチ
  • キャリアへの不安
  • 育児・介護との両立
  • 心身の負担
  • 職場環境への不満

などが考えられます。

厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」を基にした資料では、初めて勤務した会社を辞めた若年労働者の主な理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%、「人間関係がよくなかった」26.4%、「賃金の条件がよくなかった」21.8%、「仕事が自分に合わない」21.7%などが挙げられています。

ただし、これは若年労働者を対象とした調査であり、すべての企業・年代の離職理由をそのまま示すものではありません。

重要なのは、一般的な離職理由をそのまま自社へ当てはめるのではなく、自社では何が起きているのかを確認することです。

例えば、若手社員の離職が多い会社と、特定部署の中堅社員が辞めている会社では、優先すべき対策は異なります。

定着率向上策は「何を導入するか」から考えるのではなく、「何が問題なのか」を明らかにするところから始めます。

定着率だけではなく離職率も確認する

定着率とは、一定期間に入社した従業員のうち、どの程度がその後も在籍しているかを見る指標です。

例えば、ある年度に入社した従業員が50人、そのうち3年後に40人在籍していれば、

3年後定着率=40人÷50人×100=80%

となります。

一方、離職率は一定期間にどれだけの従業員が離職したかを見る指標です。

厚生労働省の雇用動向調査では、「常用労働者数に対する離職者の割合」として離職率を算出しています。

令和6年(2024年)の雇用動向調査では、年間の離職率は14.2%でした。ただし、一般労働者は11.5%、パートタイム労働者は21.4%で、さらに産業によっても違いがあります。

したがって、全国平均だけを見て「自社は高い・低い」と判断するのではなく、雇用形態や業種などの条件も踏まえる必要があります。

全社平均だけでは原因が見えない

定着率や離職率を計算したら、次に重要なのが分解することです。

少なくとも次のような切り口で確認します。

確認する項目見たいこと
部署・事業所特定部署だけ離職が多くないか
職種特定職種へ離職が集中していないか
年代若手・中堅など特定層に偏っていないか
勤続年数入社直後、1~3年目、中堅など、いつ辞めているか
雇用形態正社員、契約社員、パート等で違いがないか
上司・チーム特定組織で離職が続いていないか
時期繁忙期や異動後など特定時期に集中していないか

例えば「年間離職率15%」という数字だけでは、対策は決められません。

しかし、

営業部の入社1~2年目だけ離職が多い。と分かれば、営業部の業務量、教育体制、目標設定、上司との関係など、次に確認すべき範囲を絞れます。
ここで重要なのは、「離職が多い」という事実と、「なぜ辞めているのか」という原因を分けることです。

特定部署の離職率が高くても、それだけで「上司が原因」「給与が原因」と判断することはできません。
数字は原因を断定するためではなく、詳しく調べる場所を見つけるために使います。

離職理由を漠然と「従業員満足度が低い」とまとめてしまうと、何を改善すべきか分からなくなります。
実務では、次のように分けて考えると整理しやすくなります。

領域確認する内容主な確認方法
処遇・評価給与、昇給、評価、公平性人事データ、面談、アンケート
働き方・業務労働時間、休日、業務量、人員配置勤怠、残業、有休取得、面談
人間関係・マネジメント上司、同僚、相談しやすさ、ハラスメントサーベイ、面談、相談記録
仕事内容・キャリア適性、役割、成長機会、将来像1on1、キャリア面談
生活との両立育児、介護、柔軟な働き方制度利用状況、ヒアリング
健康・職場環境ストレス、身体的負担、作業環境健康関連データ、アンケート、現場確認

厚生労働省の令和7年(2025年)労働安全衛生調査では、現在の仕事や職業生活について「強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある」と回答した労働者は67.5%でした。

その人たちが挙げた内容では、「仕事の量」39.5%、「仕事の失敗、責任の発生等」39.5%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」32.9%などとなっています。

この結果からも、職場の課題を「福利厚生が足りない」という一つの理由だけで説明することはできません。

身体的不調が多い場合も原因を切り分ける

健康面では、腰・肩・首などの身体的不調や疲労が多い職場もあります。ただし、身体的不調がある=それが離職の原因

とは限りません。例えば腰の負担を訴える従業員が多い場合でも、

  • 特定職種に集中しているのか
  • 長時間の座位・立位が関係していないか
  • 重量物を扱う業務が多くないか
  • 人員不足によって一人当たりの負担が増えていないか
  • 休憩を取りにくくないか
  • 実際に仕事へどの程度支障が出ているのか

まで確認する必要があります。身体ケアだけで解決できる問題なのか、作業環境や業務設計そのものを改善すべきなのかを切り分けることが重要です。

人事データだけでは「どこで問題が起きているか」は分かっても、「なぜ起きているか」までは分からないことがあります。そこで、定量データと定性情報を組み合わせます。

STEP1|人事データから問題が集中している場所を探す

まず、

  • 離職率
  • 定着率
  • 勤続年数
  • 残業時間
  • 有給休暇取得状況
  • 欠勤・休職
  • 異動
  • 福利厚生利用状況

など、社内ですでに持っている情報を確認します。

目的は、課題が集中している層を特定することです。

STEP2|アンケートや面談で原因仮説を作る

例えば、特定部署の離職率が高いと分かったら、その部署について、

  • 業務量は適切か
  • 休暇を取得しやすいか
  • 上司へ相談できるか
  • 評価基準に納得しているか
  • 仕事の役割が明確か
  • 成長やキャリアをイメージできるか
  • 心身の負担を感じていないか

などを確認します。アンケートは「満足していますか」だけではなく、改善対象を特定できる質問にすることが重要です。

STEP3|退職者だけでなく在職者にも聞く

退職時面談は有用ですが、退職を決めた後だけでは改善が遅れます。
そのため、

  • 1on1
  • パルスサーベイ
  • 従業員アンケート
  • 入社後1か月・3か月・6か月などの定期面談
  • 管理職との面談
  • 福利厚生利用後アンケート

などを使い、在職中から変化を把握することも重要です。
「辞めた理由」を調べるだけでなく、辞める前にどのような問題が生じているのかを把握できる仕組みをつくります。

課題を把握したら、原因に対応する施策を選びます。

厚生労働省も「魅力ある職場づくり」について、評価・処遇・配置、人材育成、業務管理・組織管理・人間関係管理、福利厚生・安全管理・精神衛生など、複数の領域から雇用管理を改善する考え方を示しています。

重要なのは、離職対策を一律に行わないことです。

労働時間・業務量に問題がある場合

確認するのは平均残業時間だけではありません。部署・職種・時期ごとに、

  • 残業が偏っていないか
  • 特定社員へ仕事が集中していないか
  • 繁忙期の人員配置は適切か
  • 有休を取得できているか
  • 業務そのものを減らせないか

まで確認します。必要なのは福利厚生の追加ではなく、人員配置や業務プロセスの改善かもしれません。

評価・処遇に問題がある場合

「給与を上げればよい」と単純化せず、

  • 評価基準が明確か
  • 評価者によるばらつきがないか
  • 評価結果の理由が説明されているか
  • 貢献と処遇が大きく乖離していないか
  • 昇進・昇給の条件が理解されているか

を確認します。

人間関係・マネジメントに問題がある場合

特定チームで離職が続いている場合には、

  • 上司との1on1
  • 管理職教育
  • 相談窓口
  • ハラスメント対策
  • チーム内コミュニケーション
  • マネジメント負荷

などを確認します。

福利厚生を充実させても、日常的なマネジメントの問題は代替できません。

キャリアに問題がある場合

「この会社にいても成長できない」という不安がある場合には、

  • キャリア面談
  • 研修
  • スキル開発
  • 社内公募
  • 配置転換
  • 昇進・専門職など複数のキャリアパス

を検討します。

健康・身体的負担に問題がある場合

健康課題が確認された場合には、

  • 作業環境の改善
  • 休憩方法の見直し
  • 業務量・勤務体制の調整
  • 産業保健体制
  • 運動・セルフケア支援
  • コンディショニング
  • 健康教育

などが選択肢になります。

この場合も、「身体ケアを導入する」ことを先に決めるのではなく、どの従業員に、どのような負担があり、仕事へどう影響しているのかを確認してから選ぶことが大切です。

福利厚生は働きやすい職場づくりを支える手段の一つですが、福利厚生を導入すれば定着率が上がると単純に考えるべきではありません。

例えば、長時間労働が離職の主な問題なのに、健康セミナーだけを増やしても根本的な解決にはなりません。
評価制度への不満が大きい職場にコンディショニングサービスを導入しても、評価制度そのものは改善されません。

福利厚生を検討する前に、

「この制度は、自社で確認されたどの課題に対応するのか」

を説明できる状態にしておく必要があります。

確認された課題優先して検討すること福利厚生等の位置づけ
長時間労働業務量・人員配置・業務効率補助的
賃金・評価への不満処遇・評価制度原則として代替不可
上司との関係マネジメント・相談体制補助的
キャリア不安面談・教育・配置・キャリア制度研修等が選択肢
育児・介護との両立勤務制度・休暇・柔軟な働き方支援制度が有効
身体的負担作業環境・業務負荷・健康支援健康系福利厚生も候補
健康意識・セルフケア不足健康教育・行動支援セミナー等が候補

このように考えると、福利厚生を「人気の制度から選ぶ」のではなく、自社課題に対する施策として選べるようになります。

① 本当に従業員が必要としているか

担当者が良いと思う制度と、従業員が必要としている制度が一致するとは限りません。
導入前にアンケートやヒアリングを行い、ニーズを確認します。

② 利用できる人が偏らないか

制度があっても、

  • 忙しくて使えない
  • 勤務時間が合わない
  • 拠点によって利用できない
  • 上司の目が気になって使えない

という状態では活用されません。「制度があるか」だけでなく、利用できる環境があるかを確認します。

③ 認知されているか

利用率が低い理由が「ニーズがない」ではなく、「制度を知らない」こともあります。
制度名だけではなく、

  • 誰が利用できるのか
  • 何のための制度なのか
  • どう申し込むのか
  • 勤務時間中に使えるのか

まで周知します。

④ 利用を妨げている要因はないか

利用率だけを見て制度を評価すると判断を誤ることがあります。利用されていない場合には、

認知 → 関心 → 申込 → 利用

のどこで止まっているのかを確認します。

⑤ 導入後に評価できるか

福利厚生は導入して終わりではありません。

例えば、

  • 認知率
  • 利用率
  • 継続利用率
  • 利用者属性
  • 満足度
  • 利用しない理由
  • 利用者から寄せられた課題
  • 実施前後で確認した指標

などを追います。定着率だけを成果指標にすると、個別施策との関係を判断しにくくなります。

定着率は重要ですが、変化するまで時間がかかります。
また、景気、採用市場、事業再編、年齢構成など、施策以外の要因にも影響されます。
そのため、定着施策では「最終的な結果」と「途中の変化」を分けて確認します。
例えば次のように設計できます。

段階指標例分かること
実施状況参加率・利用率・面談実施率施策が届いているか
従業員の反応満足度・相談しやすさ・制度認知従業員がどう受け止めているか
課題の変化残業・有休・健康課題・職場サーベイ対象課題が変化しているか
人事結果定着率・離職率・欠勤・休職最終的な人事指標がどう変化したか

例えば健康系福利厚生を導入したのであれば、いきなり「離職率が下がったか」だけを見るのではなく、
利用されたか → 対象者に届いたか → 従業員の課題を把握できたか → 対象となる健康課題に変化があったか
という順序で評価します。

Relabが選択肢になり得るケース

ここまで確認した結果、

  • 肩・腰など身体的な負担を訴える従業員が多い
  • 疲労や身体のコンディションに関する声が多い
  • 健康系福利厚生を充実させたい
  • 福利厚生を導入するだけでなく利用状況や従業員の声も把握したい
  • 従業員が職場で利用しやすい健康支援を検討している

といった課題が確認された場合には、企業向け健康支援も選択肢になります。

Relabでは、企業へ訪問して行うコンディショニングに加え、利用状況や身体の傾向、従業員の声などをまとめるコンディション分析レポート、健康セミナーを提供しています。

一方で、離職の主因が賃金、長時間労働、評価制度、ハラスメント、人員不足などにある場合、それらの改善を健康系福利厚生より優先する必要があります。

Relabは定着率そのものを改善することを保証するサービスではなく、身体的な健康課題が確認された企業における、働きやすい職場づくりを支える選択肢の一つです。

自社の健康課題とサービスが合うか分からない場合は、導入前に実施内容や従業員の利用イメージを確認してから判断するとよいでしょう。

・コンディショニングサービスを見る

・コンディション分析レポートを見る

・健康セミナーを見る

従業員の定着率を高めるために、最初から福利厚生や新しい制度を選ぶ必要はありません。
まず、直近1~3年程度の離職状況を、

部署・職種・年代・勤続年数・雇用形態

などで分けてみてください。そこで離職が集中している層が見つかったら、勤怠、人員配置、評価、面談、従業員アンケートなどを組み合わせて原因を確認します。

その結果、

事実 → 原因仮説 → 追加確認 → 優先課題 → 施策 → 評価

の順で考えることが、定着率向上の出発点になります。福利厚生もその中の一つの選択肢です。

「他社で人気だから」ではなく、自社で確認された課題に合っているか、従業員が実際に利用できるか、導入後に評価できるかを基準に選ぶことが、働きやすい職場づくりにつながります。

運営情報

株式会社 大伸管理サービス

参考資料・参考文献

  1. 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年8月26日公表)
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/gaikyou.pdf
  2. 厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html
  3. 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r07-46-50b.html
  4. 厚生労働省「人材確保対策―雇用管理改善支援」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053276.html

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA