健康経営とは?企業が取り組むメリットと具体的な進め方

「健康経営に取り組みたいけど、具体的に何をしたらいいのか分からない」
「健康診断やストレスチェックは実施しているけど、これだけで健康経営といえるのか」
「健康経営優良法人の認定を目指すことと、健康経営そのものは何が違うのか」
健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践することです。
重要なのは、健康施策を増やすことではありません。企業として目指す状態を明確にし、それに関係する健康課題を把握したうえで、必要な施策を実施し、結果を評価・改善していくことが基本です。
この記事では、健康経営の意味や健康管理・福利厚生との違い、企業が取り組むメリットに加えて、自社の健康課題をどう確認し、施策をどう選び、実施後に何を評価すればよいのかまで具体的に解説します。
1|健康経営とは
経済産業省は健康経営について、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践するものとしています。
つまり、単に「従業員の健康に良さそうな施策を行う」という考え方ではありません。
2025年3月に公表された「改訂版 健康経営ガイドブック」では、健康経営の実践について、経営方針に基づく推進方針・目標の設定、組織体制の構築、具体的な推進計画の策定・実行、評価・改善までが整理されています。
また、健康投資の目的や効果を明確にする方法として「健康経営戦略マップ」が示されています。
健康経営戦略マップでは、実施する健康経営施策と、その効果を測るKPI、さらにKGI、健康経営の目標、健康経営の推進方針とのつながりを可視化します。
そのため健康経営では、
何を目指すのか
→そのためにどの健康課題へ対応するのか
→どの施策を実施するのか
→何を指標として評価するのか
を一連の流れとして考えることが重要です。
健康診断、ストレスチェック、健康セミナー、運動施策、福利厚生なども、自社の目的や課題に合っていれば健康経営を構成する取り組みになり得ます。
大切なのは、施策の数ではなく、目的・課題・施策・評価がつながっていることです。

2|健康経営と健康管理・福利厚生の違い
健康経営と混同されやすいものに、健康管理や福利厚生があります。
これらは完全に別のものではありません。健康管理や福利厚生も、自社の課題に応じて健康経営を実践するための取り組みの一部になり得ます。
| 項目 | 主な役割 | 具体例 | 健康経営との関係 |
|---|---|---|---|
| 健康管理 | 従業員の健康状態を把握・管理する | 健康診断、保健指導など | 健康状態の把握や健康保持のための取り組み |
| 福利厚生 | 従業員の生活や働きやすさなどを支援する | 住宅、食事、育児・介護、健康支援など | 自社の課題に合っていれば施策の選択肢になり得る |
| 健康経営 | 健康を経営的な視点から捉え、戦略的に取り組む | 目標設定、課題把握、施策、評価・改善 | 個々の取り組みを経営上の目的や健康課題とつなげて考える |
例えば、福利厚生として運動機会を提供していても「なぜ実施するのか」「どの課題に対応しているのか」「実施後に何を見るのか」が整理されていなければ、施策単体で終わってしまいます。
健康経営では、個々の施策の有無だけではなく、その施策を行う目的と評価方法まで整理されているかを考えることが重要です。
3|企業が健康経営に取り組むメリット
健康経営に取り組むことで、従業員の健康保持・増進に向けた取り組みを、企業の経営上の目的と結び付けて進めやすくなります。
また、健康状態だけでなく、健康問題による仕事への支障や、より長期的な組織・経営に関する指標まで段階的に確認することができます。
ただし、健康経営に取り組めば「生産性が上がる」「離職率が下がる」「企業価値が上がる」と単純に断定することはできません。これらには、業務量、人員配置、賃金、評価制度、マネジメント、職場環境など、健康以外の要因も関係するためです。
健康への取り組みを経営上の目的と結び付けられる
健康経営では、「健康に良さそうだから実施する」のではなく、企業として目指す状態から健康施策の必要性を考えます。これによって、
「毎年実施しているから」
「他社でも導入されているから」
「人気の福利厚生だから」
と、施策そのものが目的になることを避けやすくなります。
限られた予算や人員の中で健康施策を行う場合にも、「なぜこの施策へ投資するのか」を整理しやすくなります。
自社で優先すべき健康課題を整理できる
健康経営を進めるには、自社の健康状態や働き方を確認する必要があります。
健康診断、ストレスチェック、勤怠、従業員アンケート、業務・人事情報などを組み合わせることで、
- どのような健康課題があるのか
- どこに課題が多いのか
- 仕事への支障が生じているか
- どの課題から追加確認すべきか
を整理できます。
ただ、データから原因まで直接分かるとは限りません。
例えば、「特定部署で肩や腰の不調を訴える従業員が多い」と分かっても、それだけでは作業環境、業務量、勤務時間など、何が関係しているのかまでは判断できません。
そして、健康課題の具体的な把握方法については、「従業員の健康課題を企業はどう把握する?健康状態を可視化する方法」で詳しく解説しています。
健康問題による仕事への支障も確認できる
まず、健康経営では病気の有無や欠勤だけでなく、健康問題によって仕事へどの程度支障が生じているかも確認対象になります。
その一つが「プレゼンティーズム」です。
プレゼンティーズムとは、健康上の問題を抱えながら出勤し、仕事のパフォーマンスが低下している状態を指します。
勤怠だけでは把握しにくいため、従業員アンケートなどを使って、健康問題による仕事への支障を確認する方法があります。
詳しくは、「プレゼンティーズムとは?企業が知っておきたい『見えない生産性低下』」で、測定方法や結果の見方まで解説しています。
健康施策の目的と成果を整理しやすくなる
経済産業省の健康経営に関する資料では、健康投資による効果について、「取組状況」「意識・行動変容」「健康アウトカム」といった段階で捉え、その先に人的資本・社会関係資本の形成・蓄積や企業価値への波及を位置付けています。
そのため、最終的な業績だけを見るのではなく、
施策を実施できたか
→従業員に届いたか
→意識や行動に変化があったか
→健康状態などに変化があったか
と、施策に近いところから結果を確認できます。
そのうえで、仕事や組織・経営に関する指標との関係を長期的に確認していきます。
ただし、施策の実施後に数値が変化したことだけをもって、その施策が原因だと判断することはできません。
4|健康経営では「施策ありき」で考えない
健康経営を始めるときに避けたいのが、最初から導入する施策を決めることです。
例えば、
「他社が導入しているから健康アプリを導入しよう」
「肩や腰の不調が多そうだから身体ケアを導入する」
「運動不足が気になるから運動イベントを開催しようか」
といった進め方では、自社の課題と施策が一致しない可能性があります。
健康施策を選ぶ前に「企業として何を目指すのか」「そのために、どの健康課題へ対応する必要があるのか」を整理します。
健康課題が確認された場合も、すぐに原因や対策を決めず、必要な情報を追加確認してから施策を選ぶことが重要です。
5|健康経営の具体的な進め方
ここからは、企業が健康経営を進めるときに何を確認し、どう判断すればよいのかを6段階で整理します。

STEP1|企業として目指す状態を明確にする
最初に、「健康経営によって企業としてどのような状態を目指すのか」を整理します。
例えば、
- 従業員が健康に働き続けられる環境を整える
- 従業員が能力を発揮しやすい職場をつくる
- 健康への取り組みを経営方針と結び付ける
などです。まず目指す状態を明確にすることで、次に「その実現に関係する健康課題は何か」を考えられるようになります。
STEP2|自社の健康課題を把握する
次に、自社がすでに保有している情報などから健康課題を確認します。
| 確認する情報 | 主に確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 健康診断 | 健康状態や有所見の状況など | 仕事への支障や職場要因までは分からない |
| ストレスチェック | 個人のストレス状況、集団分析による職場の傾向など | 活用目的や情報の種類に応じて適切に取り扱う |
| 勤怠データ | 欠勤、休職、長時間労働など | 健康問題が原因だと決めつけない |
| 従業員アンケート | 身体的不調、疲労、睡眠、仕事への支障など | 質問内容や回答率なども確認する |
| 業務・人事情報 | 部署、職種、勤務形態、業務特性など | 他の情報と組み合わせて課題の分布を確認する |
一つのデータだけで判断するのではなく、必要に応じて複数の情報を組み合わせます。
また、個人情報や健康情報を適切に取り扱いながら、部署・職種などによる傾向を確認すると、全社平均だけでは見えにくい課題を把握できる場合があります。
健康課題の把握方法については「従業員の健康課題を企業はどう把握する?健康状態を可視化する方法」で詳しく解説しています。
STEP3|事実と原因仮説を分けて追加確認する
データから課題が見つかっても、すぐに原因を決めないことが重要です。
例えば、「特定部署で肩や腰の不調を訴える従業員が多い」という結果が確認されたとします。
これは確認された「事実」になり得ます。一方、
「作業姿勢が原因」
「業務量が原因」
「運動不足が原因」
というのは、この段階では原因についての「仮説」です。そこで、
事実 → 原因仮説 → 追加確認 → 判断
の順番で考えます。身体的不調であれば、
- どの部署・職種に多いのか
- どのような業務をしているのか
- どの動作や姿勢で困っているのか
- 作業環境や設備に問題がないか
- 業務量や勤務時間に問題がないか
- 仕事へどの程度支障が出ているのか
などを追加確認します。
STEP4|優先課題を決め、対応方法を選ぶ
原因候補を追加確認したら、どの課題から対応するかを決めます。判断材料としては、
- 対象となる従業員の多さ
- 健康・安全上の重要性
- 仕事への支障の大きさ
- 特定部署・職種への集中
- 法令上必要な対応か
- 企業側で改善できる要因があるか
などが考えられます。そのうえで、確認結果に応じて対応方法を選びます。
| 確認された事実 | 次に確認すること | 確認結果に応じた対応の方向 |
|---|---|---|
| 長時間労働が多い | 部署、職種、業務量、人員状況など | 労務管理、業務配分、人員配置など |
| ストレスが高い傾向がある | 業務量、人間関係、役割、職場環境など | 確認された要因に応じて職場環境やマネジメント、産業保健等を検討 |
| 肩・首・腰などの身体的不調が多い | 作業内容、設備、姿勢・動作、仕事への支障など | 作業環境や業務設計を確認し、必要に応じて身体的健康支援も検討 |
| 運動習慣に課題がある | 対象者、業務との関係、実施を妨げる要因など | 確認結果に応じて運動機会や健康教育等を検討 |
| 睡眠に関する問題が多い | 勤務状況、働き方、生活習慣など | 背景を確認したうえで必要な対応や専門的支援を検討 |
例えば、身体的不調が多くても、その背景に作業設備や業務設計の問題が確認された場合は、身体ケアだけではなく、その環境への対応を検討する必要があります。
長時間労働や人員不足が主な問題であれば、福利厚生を追加するより、業務量や人員配置への対応を優先すべき場合があります。
健康支援は、自社で確認された課題に適しているかを基準に選ぶことが重要です。
STEP5|施策を実施する前に評価指標を決める
施策を決めたら、実施前に「何を見て評価するのか」を決めます。例えば、
- 対象者へ施策が届いたか
- 実際に参加・利用されたか
- どのような反応があったか
- 意識や行動に変化があったか
- 対象とした健康課題に変化があったか
などです。施策の目的に合った指標をあらかじめ設定し、実施後の評価に使用します。
STEP6|結果を確認し、次の改善につなげる
実施後は、設定した指標を確認します。
例えば利用率が低かったとしても、すぐに「需要がない」と判断するのは早い場合があります。
- 制度が十分に知られていなかった
- 利用時間が業務と合わなかった
- 勤務時間中に利用しにくかった
- 対象者と施策が合っていなかった
など、運用上の問題が考えられるからです。
反対に、利用率が高くても、目的としていた課題に変化がなければ、施策内容や課題設定を見直す必要があります。
施策そのものの問題なのか、運用の問題なのか、最初の課題設定の問題なのかを切り分け、次の取り組みへ反映します。
6|健康経営の取り組みをどう評価する?
健康経営の評価では、最終的な業績だけを見るのではなく、施策に近いところから段階的に確認します。
| 評価する段階 | 指標例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 実施・到達 | 実施率、認知率、参加率、利用率 | 施策を実施でき、対象者へ届いたか |
| 反応・行動 | 満足度、継続意向、行動変容に関する指標など | 施策への反応や行動に変化があったか |
| 健康 | 健康診断に関する指標、ストレス、身体的不調など | 対象とした健康課題に変化があったか |
| 仕事への支障 | 欠勤、プレゼンティーズムなど | 健康問題による仕事への支障に変化があったか |
| 組織・経営 | エンゲージメント、離職など | より長期的な組織・経営指標にどのような変化があったか |

すべての施策で、これらすべてを測定する必要はありません。施策の目的に応じて必要な指標を選びます。
例えば、運動施策を実施した直後に離職率だけを確認しても、その施策を適切に評価することは難しいと思います。
まずは施策に近い指標を確認し、そのうえで必要に応じて健康、仕事、組織・経営に関する指標との関係を見ていきます。
また、施策の実施前後で数値が変わったことと「その施策によって数値が変わったこと」は同じではありません。
同じ時期に業務量、人員配置、評価制度などが変わっていれば、それらが影響している可能性もあります。
確認できた変化は「事実」、その変化が起きた理由は「仮説」と分けて評価することが大切です。
7|健康経営優良法人認定制度とは
健康経営について調べると、「健康経営優良法人」という言葉もよく目にします。
健康経営優良法人認定制度は、特に優良な健康経営を実践している法人を「見える化」し、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから評価を受けられる環境を整備することを目的に、経済産業省が2016年度に創設した制度です。
2026年3月に発表された「健康経営優良法人2026」では、
- 大規模法人部門:3,765法人
- 中小規模法人部門:23,085法人
が認定されています。ただし、健康経営と健康経営優良法人の認定取得は同じものではありません。
健康経営は、従業員等の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践する考え方です。
健康経営優良法人認定制度は、健康経営に取り組む法人を一定の評価基準に基づいて認定する制度です。
認定取得だけを目的に施策を増やすのではなく、自社が目指す状態や健康課題に沿って取り組むことが基本になります。
8|まとめ|まずは自社が目指す状態と健康課題を整理する
健康経営で重要なのは、健康施策を増やすことではなく、企業として目指す状態と自社の健康課題をつなげ、その課題に合った取り組みを評価・改善していくことです。
これから始める場合は、最初から新しいサービスを探す必要はありません。
まず「健康経営によって自社は何を目指すのか」を明確にし、健康診断、ストレスチェック、勤怠、従業員アンケートなど、すでにある情報から関係する健康課題を確認するところから始めましょう。
Relabについて
健康課題を確認した結果、肩・首・腰などの身体的不調が仕事上の困りごとにつながっており、身体的健康への支援が適している場合は、企業向けコンディショニングも選択肢の一つになります。
Relabでは企業へ訪問し、一人ひとりの身体の状態に合わせたコンディショニングケアを提供しています。
一方、主な課題が長時間労働、人員不足、業務量、作業環境、マネジメントなどにある場合は、それらへの対応を優先する必要があります。
自社で確認された課題に身体的健康支援が合っている場合は、Relabのコンディショニングサービスをご確認ください。
参考資料・参考文献
- 経済産業省「第2回 健康経営推進検討会 参考資料1-3 株式会社日本経済新聞社提出資料(改訂版 健康経営ガイドブック)」2025年3月18日
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/002_s01_03.pdf - 経済産業省「健康経営の推進について」2025年10月17日
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/251017_kenkoukeieigaiyou_.pdf - 経済産業省「『健康経営優良法人2026』認定法人が決定しました」2026年3月9日
https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260309002/20260309002.html
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